脳卒中にはいくつかの種類があります
脳卒中は、脳の血管に突然トラブルが起こる病気の総称で、日本人の死因や、寝たきり・介護が必要になる原因の上位を占める病気です。
大きく分けると、血管が詰まる「脳梗塞」と、血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」があり、それぞれ原因も症状も異なります。
脳卒中の多くは、ある日突然おそいかかりますが、その背景には、日頃の血管の状態や生活習慣が深く関わっています。そして、種類を問わず共通して大切なのが、「少しでも早く治療を始めること」です。
今すぐ救急受診が必要な症状
脳卒中は、発症してからできるだけ早く治療を始めることで、命を救い、後遺症を軽くできる可能性が高まります。
次のような症状が突然あらわれた場合は、脳卒中が強く疑われます。すぐに救急要請(119番)をしてください。
「FAST(ファスト)」で覚える、脳卒中のサイン
F(Face/顔):顔の片側がゆがむ、笑うと口角が片方だけ下がる
A(Arm/腕):片方の腕に力が入らない、上げたまま保てず落ちてしまう
S(Speech/言葉):ろれつが回らない、言葉が出ない、話が通じない
T(Time/時間):これらの症状が出たら、発症時刻を確認し、すぐに119番
そのほかの危険なサイン
- 突然の激しい頭痛(バットで殴られたような、経験のない痛み)
- 片方の手足や顔のしびれ
- 突然、物が二重に見える、視野が欠ける
- 突然、めまいでうまく立てない・歩けない
大切なのは、「様子を見ない」ことです。
症状が一時的におさまっても、危険なサインの可能性があります。「そのうち治るだろう」と待っている間にも、脳のダメージは広がっていきます。
発症した時刻は、治療方針を決める重要な情報になりますので、覚えておいてください。おかしいと思ったら、迷わず救急車を呼びましょう。
脳卒中の種類について
脳卒中は、脳の血管に突然トラブルが起こり、脳の細胞がダメージを受ける病気の総称です。
その原因や、血管に起こることによって、いくつかの種類に分けられます。
脳卒中は、血管が「詰まる」タイプ(脳梗塞)と、「破れる」タイプ(脳出血・クモ膜下出血)に大きく分けられます。
また、脳梗塞の前触れとして起こる「一過性脳虚血発作(TIA)」や、くも膜下出血の原因となる「脳動脈瘤」、脳の血管が細くなる「もやもや病」など、脳卒中と深く関わる病気もあります。
こうした病気を早く見つけ、対策することが、脳卒中の予防や重症化を防ぐうえで、とても大切です。
脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が詰まって血液が流れなくなり、その先の脳細胞が酸素や栄養を受け取れずにダメージを受ける病気です。
脳卒中の中で最も多く、詰まり方によっていくつかのタイプに分かれます。
主な特徴
- 片方の手足や顔のしびれ、麻痺(力が入らない)
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 片方の目が見えにくい、物が二重に見える
- めまいでうまく歩けない、体のバランスがとれない
原因・なりやすい方
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病がある方
- 不整脈(特に心房細動)があり、心臓にできた血のかたまりが脳へ飛ぶことがある方
- 喫煙・過度の飲酒の習慣がある方
- 加齢による動脈硬化の強い方
進行すると、慣れた道で迷う、家事や身の回りのことが難しくなるなど、日常生活への影響が広がっていきます。
対応のポイント
脳梗塞は、詰まった血管を再び通す治療を、できるだけ早く行うことが重要です。
発症からの時間によって受けられる治療が変わるため、「おかしい」と思ったらすぐに救急要請してください。また、脳梗塞は再発しやすい病気でもあります。
脳出血
脳出血は、脳の中の細い血管が破れて出血し、脳の組織がダメージを受ける病気です。
あふれ出た血液が固まって「血腫」となり、周りの脳を圧迫することでも、さまざまな症状を引き起こします。
主な特徴
- 突然の頭痛
- 片方の手足や顔の麻痺、しびれ
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 吐き気・嘔吐
- 意識がもうろうとする、意識を失う
出血する場所や量によって、あらわれる症状や重さは異なります。
原因・なりやすい方
- 高血圧の方。脳出血の最大の原因。血圧が高い状態が続くと、血管がもろくなります
- 過度の飲酒、喫煙
- 加齢による血管の変化
- 糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病
対応のポイント
脳出血も、一刻を争う病気です。突然の頭痛や麻痺などがあれば、すぐに救急要請してください。
脳出血の予防で最も大切なのは、血圧の管理です。日頃から血圧を適切に保つことが、発症のリスクを大きく下げます。
クモ膜下出血
クモ膜下出血は、脳を覆う「くも膜」という膜の下を走る血管が破れ、脳の表面に出血が広がる病気です。
その多くは、脳動脈瘤(血管のこぶ)が破裂して起こります。発症すると命に関わることも多く、脳卒中の中でも特に危険なタイプです。
主な特徴
- 突然の、経験したことのない激しい頭痛(「バットで殴られたような」と表現されることが多い)
- 吐き気・嘔吐
- 意識を失う、意識がもうろうとする
- 首の後ろが硬くなる、痛む
原因・なりやすい方
- 脳動脈瘤の破裂(最も多い原因)
- 高血圧のある方
- 喫煙・過度の飲酒の習慣がある方
- 血のつながったご家族に、くも膜下出血や脳動脈瘤の方がいる場合
対応のポイント
突然の激しい頭痛は、クモ膜下出血の重要なサインです。ためらわず救急要請してください。一度出血すると再び出血しやすく、命に関わる危険が高まるため、一刻も早い対応が必要です。
なお、破裂の原因となる脳動脈瘤は、破裂する前であれば、脳ドックなどで発見できることがあります。未然に防ぐという観点からも、早期発見が非常に重要です。
脳動脈瘤(クモ膜下出血の原因となる病気)
脳動脈瘤は、脳の血管の一部が、こぶのようにふくらんだ状態をいいます。
動脈瘤そのものは、破裂しなければ症状がないことがほとんどです。しかし、これが破裂すると、命に関わるクモ膜下出血を引き起こします。いわば、クモ膜下出血の「原因」となる病気です。
主な特徴
- 破裂するまで、多くは無症状で気づかれない
- 破裂すると、突然の激しい頭痛(クモ膜下出血)を起こす
- 大きくなると、まぶたが下がる、物が二重に見えるなどの症状が出ることがある
なりやすい方・関わる要因
- 高血圧のある方
- 喫煙・過度の飲酒の習慣がある方
- 血のつながったご家族に、脳動脈瘤やクモ膜下出血の方がいる場合
- 女性、加齢
対応のポイント
脳動脈瘤の最も重要なポイントは、破裂する前に見つけられることです。
症状がないため、MRI検査(特にMRA:脳の血管を映す検査)による脳ドックなどで、偶然または予防的に発見されることが多くあります。見つかった場合は、大きさや場所、形などから破裂の危険性を評価し、経過観察や治療を検討します。
「家族にクモ膜下出血の人がいる」「一度調べておきたい」という方は、脳ドックをご検討ください。
一過性脳虚血発作(TIA)
一過性脳虚血発作(TIA)は、脳の血管が一時的に詰まりかけて、脳梗塞と同じような症状が出るものの、短時間でおさまってしまう状態をいいます。
症状が消えるため見過ごされがちですが、これは「脳梗塞の前触れ」であり、危険な症状です。
主な症状(脳梗塞と同じだが、一時的)
- 片方の手足や顔のしびれ、麻痺
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 片方の目が急に見えなくなる
- めまい、うまく歩けない
これらの症状が、数分から数十分、長くても24時間以内におさまるのが特徴です。
なぜ危険なのか
TIAを起こした方は、その後に脳梗塞を発症する危険が高いことが分かっています。
特に、発症から間もない時期は、脳梗塞を起こすリスクが高まります。
対応のポイント
最も大切なのは、「症状が消えたから大丈夫」と考えないことです。
TIAは、本格的な脳梗塞を防ぐための、またとない「猶予」でもあります。症状がおさまっていても、できるだけ早く受診し、原因を調べて再発予防を始めることが、脳梗塞を防ぐポイントになります。
もやもや病
もやもや病は、脳に血液を送る太い血管(内頸動脈の先端など)が、少しずつ細くなったり詰まったりしていく病気です。
不足した血流を補おうと、周りに細い血管が異常に発達し、その様子が検査画像で「もやもや」とけむりのように見えることから、この名前がつけられました。
主な特徴
- 血管が細くなることで、脳梗塞(血流不足)を起こすことがある
- 発達した細い血管が破れて、脳出血を起こすこともある
- 子どもと、大人(30〜40代)の両方に起こりやすい年代がある
- 血のつながったご家族に発症がみられることがある
あらわれやすい症状
- 手足の脱力やしびれ(特に、泣いたり、熱いものを吹いて冷ますときなど、息を強く吐いたときに起こることがある)
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 頭痛、けいれん
- 脳出血による突然の頭痛や麻痺(主に大人)
対応のポイント
もやもや病は、MRI検査(MRA)などで診断できます。
脳梗塞と脳出血の両方のリスクがあるため、専門的な評価と経過観察、状態に応じた治療が必要です。診断や治療には専門的な対応が求められるため、疑わしい場合は適切な医療機関と連携して対応します。気になる症状がある方は、ご相談ください。
脳卒中を予防するために
脳卒中は、ある日突然おそいかかるように見えますが、その多くは、日頃の生活習慣や血管の状態と深く関わっています。裏を返せば、日々の心がけによって、発症のリスクを大きく減らせる病気でもあります。
予防のために大切なポイントは、次のとおりです。
生活習慣病をしっかり管理する
高血圧
脳卒中の最大の危険因子。血圧を適切に保つことが最も重要です
糖尿病・脂質異常症
動脈硬化を進め、血管を傷めます
生活習慣を見直す
- 禁煙する(喫煙は血管を傷める大きな要因です)
- お酒を飲みすぎない
- 塩分を控えめにした、バランスのよい食事
- 適度な運動を続ける
- 十分な睡眠と、ストレスをためない工夫
定期的に脳の状態を調べる
脳ドックで、脳動脈瘤や無症状の脳梗塞、血管の狭まりを早期に発見できます。
特にご家族に脳卒中の方がいる場合は、一度調べておくと安心です。
よくある質問
脳卒中と脳梗塞は違うのですか?
「脳卒中」は、脳の血管に起こる病気の総称です。
その中に、血管が詰まる「脳梗塞」、血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」が含まれます。脳梗塞は、脳卒中の一種です。
症状がすぐに消えました。受診しなくてもよいですか?
いいえ、必ず受診してください。
症状が短時間で消える場合、「一過性脳虚血発作(TIA)」の可能性があります。これは脳梗塞の前触れで、放置すると本格的な脳梗塞につながる危険があります。
脳卒中は予防できますか?
はい、多くは予防が可能です。
特に高血圧の管理が重要で、禁煙や食生活の見直しなども効果的です。脳ドックで脳動脈瘤などを早期に発見することも、予防につながります。
家族に脳卒中の人がいます。私も検査を受けたほうがよいですか?
脳動脈瘤やもやもや病などは、ご家族に発症がみられることがあります。
ご不安な場合は、脳ドックで一度調べておくと安心です。
脳ドックでは何が分かりますか?
脳動脈瘤、無症状の脳梗塞、血管の狭まりなどを、症状が出る前に見つけられます。
当院では、その日のうちにMRI検査を行える体制を整えています。